???一般に、日本企業は多くの欧米人から見ると非常にわかりにくい存在であるといわれている。それは、非常に効率的というわけではないし、企業家精神に富んでいるのでもない。また、自由奔放でもない。それなのに国際市場のなかで着実に力をつけ、国際競争力を高めてきている。 ???なぜ、日本企業は成功したのだろうか。本書はそんな疑問に明確な答えを与えている。端的に言えば、「組織的知識創造」の技能・技術によって日本企業は国際社会のなかで成功してきたと指摘しているのだ。では、「組織的知識創造」とは何か。それは、新しい知識を作り出し、それを組織全体に広め、製品やサービス、あるいは業務システムに具体化する組織全体の能力のことであり、その根本における重要な要素は、組織の最も普遍的な要素である「人間知」というわけである。「人間知」はギリシャ古代以来、常に認識論(知識論)の中心となる課題であった。ここ数年、社会経済学者のピーター・ドラッカーやアルビン・トフラーが、経営資源やパワーとしての知識の重要性を訴えているが、本書では、「人間知」を2種類に分けている。1つは「形式知」と呼ばれるもので、文法にのっとった文章や数字的表現、技術仕様、マニュアルなどに見られる形式言語によって表現されるものである。もう1つは、これが組織的知識想像のなかで最も重要なファクターなのだが、「暗黙知」と言われる形式言語では表現できない知識である。これは、人間の集団行動にとってきわめて重要な要素であると著者は指摘する。暗黙知とは、人間ひとりひとりの体験に基づく個人的な知識であり、信念、ものの見方、直観、価値システムといった無形の要素を含んだものである。 ???しかし、きわめて重要な要素であったにもかかわらず、経営資源のなかで暗黙知はこれまで無視されてきた。だが、この形式知と暗黙知が相互作用することこそが企業の知識創造のキーポイントであり、組織的知識創造とは、この2つの知の相互作用によるスパイラル・プロセスである。個人の知識と組織全体とは相互に作用しあうことが重要であり、そうすることによって新しいイノベーションの開発につながり、競争優位に立つことができる。それこそが短期間に日本企業が国際社会のなかで成功した要因なのである。 ???本書は、日本を代表する自動車や家電メーカーなどがなぜ国際社会のなかで成功したのかを「知識」という側面から分析し、企業組織における知識の捉え方や考え方を根本的に変更するよう求めている。そして、企業組織による知識創造こそが日本企業の国際競争力の最も重要な源泉であるとする本書は、長引く不況にあえぐ企業経営者やビジネスマンに、日本的経営の良さを改めて感じさせてくれるものである。(辻 秀雄)
「普遍的な」方法を論じた本
→知識を創造する
「普遍的な」方法を論じた本です
→個人と組織という側面や
暗黙知と形式知という側面、
そして、日本と海外という側面からも
重厚な論理で組み上げられています
..その緻密さ、正確さは驚嘆に値します
→4つの知識変換モードと呼ばれる
暗黙知と形式知の
2つの組み合わせによる4つの推移が
この知識創造の核になっています
よってこの知識創造を
「真に理解する」には
まずは、この「構造を知り」
次に「実践する」ことなんだと思います
→実務者や理論が苦手な人は、第四章から
理論は好きだがプラトンやデカルトは苦手な人は、第三章から
読めばよいと著者も言っていますが(P26)
私のお奨めは、第二章!
なぜならそこには
知識そのものを理解する「知識の歴史」が
コンパクトにまとめられているからです
「未来(の知識)を創造」したいなら
「(知識の)歴史を学ぶ」べきだと
私は思います..
経営は精神力
経営の考え方を暗黙知と形式知に分けて、精神的な面も含めて解説をしていく本。ソクラテスから始まって、考え方を紐解いていくのは、面白い。
第3章は原書でも押さえておかれるべし
本書は、日本の経営学者が世界的に評価された数少ない名著である。経営学を学ぶ者にとっては基本テキストである。よって邦訳以外にも原書にも当たられることをお薦めする。特に第3章は押さえておかれるべしと思われる。
ところで、第3章は野中理論を本格的に展開している重要な部分であるが、概念説明の基本となるべき図において邦訳と原書は相違があるのでご注意されたい。その相違部分は、原書71?72頁と邦訳106?107頁に展開する図3?3と図3?4を比べて見ると判明する。邦訳には図3?4にも図3?3にあるグルグルとしたスパイラルが描かれているが、原書には描かれていない点である。
このように著者の重要な理論展開部分における図表などは、邦訳と原書をよくよく比較しておかないとプレゼン時などに指摘を受けることが多いので注意されたい。
まったく先生方にも困ったモンだよ
ミンツバーグの「戦略サファリ」で、ほとんど唯一と言っていいほどしっかり紹介されていた日本人の本なので購入。つまりボクにとっては逆輸入てェ事になる。所謂、形式知・暗黙知の理論が際立っている為、前述の戦略サファリではラーニング・スクール代表として書かれていたのだが、感想としては、理論はラーニング、ココロはカルチャー・スクールといった所でしょうか。ただま?現場の人間から言わせて貰えば、暗黙知部分については、ラーニングする人と教師間の感情や、相性、その人の人間的魅力というポイントが邪魔して中々、前に進めないすね。こうやればいいのに何でわかんねーんだよォ(上司、先輩、MBAな方々)。うるせ?な。とりあえず頷いて帰っちゃおうかな?(後輩、部下)。という風にならないようにする暗黙知を先ず整備すべきと改めて自戒させられた。またこの本には企業のエレガントな暗黙知取得の成功例が載っているのだが、暗黙知部分の取得がサラっと書かれており、日本人的な言葉に出さない部分が当然欠けている(何故なら言葉に出さないからインタビューから必ず漏れる)事は留意したい。
日本発の世界的名著
米国にはHBSを中心に多くの経営戦略に関する議論があります。それらの多くは極めて洗練されています。説得力があります。特にポーター先生の理論は複雑な経営雑務をモデル化して、切れ味鋭く料理しています。それらを理解することでかなりの部分において、日本企業がおかれた現状と課題を浮き彫りにすることができます。しかしながら、米国発経営理論では、なぜここまで日本企業、特に製造業が世界のキープレーキャーに成長したのか、課題はあるものの依然として世界ブランドとしていき続けているという事実に対して、説得力のある議論を提供はしておりません。(根本的には価値観の違いがあるので、当然といえば当然でしょうが。。)この本はそんなもやもやをすっきりさせてくれます。なんで日本企業はここまで大きく成長できたのか、そして本当の課題はなんなのかについて有意義な示唆を提供してくれると思います。”やっぱり日本の製造業は内部に競争力の原動力をもっているのだ。今までのやり方は基本的に間違ってはいないのだ。”ということに気づかせてくれます。考察も深いです。知識創造の過程を一般的なプロセスとしてとらえ、経営理論にまで発展させようという試みがなされています。(残念ながらモデル化のレベルでいえば、ポーターには遠く及んでいないと思いますが。。)いずれにせよ、読まないと損をします。読んで損せずにすんで良かったな。
東洋経済新報社
知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代 (ちくま新書) ナレッジ・イネーブリング―知識創造企業への五つの実践 知識創造の方法論―ナレッジワーカーの作法 イノベーションの本質 ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件
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